私は、29年前、そんな上ノ廊下に無謀にも単独で入谷し、上ノ黒ビンガ入り口で急流の徒渉に進退窮まったところを他のパーティーに助けられ、以後ともに高巻き、懸垂下降、ザイル徒渉を数限りなく繰り返し、上流の立石にたどり着いたときには、「助かった!」というのが正直な実感であり、イワナ釣り、焚き火など沢旅を楽しむゆとりはまったくありませんでした。また、上ノ黒ビンガ入り口にてカメラを濡らしたため以後の写真は撮れないままに終わっていました。その時、私は、強力なパートナーと共に再び上ノ廊下を訪れて沢旅を余裕を持って心ゆくまで楽しんでやろうと決心したのです。
その後月日は流れいつしか13年が過ぎ、夏山山行の計画に頭を悩ませる時期となりました。そんなとき、ふと、前年、クラブ仲間たちが上ノ廊下に憧れ、私から市販のビデオ<上ノ廊下完全遡行>を借りて研究し、遡行を企てるも冷夏多雨に災いされて断念したことを思い出しました。また、私の家内も上ノ廊下に興味を抱いていました。加えて、今夏は史上まれにみる猛暑小雨であり、北アルプスは雪解けが例年より半月も早かったため残雪が非常に少なく、上ノ廊下遡行にはまたとない好条件であると考えられました。
私にとってはたいへん思い出深い遡行でした。
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